つなかぬのWEB日誌

あなたのうしろなう。^^

 皆川博子『u (ウー)』読了。

 導入からUボートものを期待してしまうが、割合としてはオスマン帝国史が中心となり、難解な用語の頻出に悶えた・・・。しかし、読み進めるにつれ、壮大な物語の全容が明らかとなる。すべてがつながり、物語が帰結する場所には、得難い感嘆が待ち受けていた・・・!300頁を過ぎてからが、今作品の真髄である。


 「無意味であろうと、生き続けていたいのだ。小さい羽虫、糞虫と同様に。剽悍な鷹、臆病な兎と同様に―」


 さて、作中に直接登場しないにも関わらず、シュテファンの姉・ラウラの存在が強く印象に残った。(以下ネタバレ)

 シュテファンは、敵陣に命懸けで弟の首級を取り戻しにきた村娘・レミリアに、生き別れの姉・ラウラの影を重ねるが、積極的にレミリアと交流する弟分のミハイとは対照的に、彼女と距離を取ろうとする。やがて、シュテファンはふいにその時代から姿を消す。のちにレミリアはミハイと結ばれ、不死となったシュテファンは、彼らの子孫を連綿と見守っていくことになる。

 ヤノーシュはその行為をレミリアへの思慕故だと推測するが、むしろそれは、ヤノーシュ自身の、女性という存在に対する感情の発露のように感じる。シュテファンの行動の裏には、傷つけてしまったレミリアと、ラウラの面影が複雑に絡み合っている。その想いは、姉への情愛という範囲を超えているように思われるが、安易に邪推してしまうような恋慕や性愛といったものさえ更に超えた感情を想像せずにはいられないのだ・・・。

 そもそもは、シュテファンから持ちかけた手記の制作であるのにも関わらず、多弁なヤノーシュに比べて、シュテファンは自らの内面についての記述が極端に少ない。つまるところ、黒く塗りつぶされた頁に、わたしの嗜好を透かしみられているに過ぎない・・・ということになるのかもしれない。