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あなたのうしろなう。^_^

島田荘司「龍臥亭事件」を読了。

名探偵・御手洗潔シリーズの番外編的な立ち位置で、かつて御手洗のワトソン役であった石岡が、ホームズに捨てられたと思い込み憔悴していたところ、妙な依頼が舞い込み、ずるずると「津山三十人殺し事件」を下敷きとする陰惨な事件に巻き込まれてしまう・・・という粗筋。上・下巻に分かれていて、合わせると結構な分量だが、ついつい一気に読んでしまう魔力があった。

上巻では、語り手・石岡の精神の荒みっぷり、卑屈さが際立ち、苦笑してしまうところだが、風景の美しさや草木の薫る描写などは情緒があってとても心地よい。舞台となる旅館・龍臥亭の意匠も想像するだにワクワクするような趣だ。上巻は、この過剰なまでの卑屈な語りと情景の豊かな描写の対比に唸った。

下巻で目を剥いたのは、結末もさることながら、サブストーリーである「津山三十人殺し」の述懐に通常の文庫本ほどもあるページを割いていることだ。これだけでもかなりの読み応えがあり、本題を忘れて読みふけってしまった。

肝心の謎解きに関しては・・・個人的にいえば読んでいて面白ければ何でもいいのだが、やや剛腕気味だとは思う。犯人と目的まではどうにか当たりがついたが、仕掛けが全くの驚天動地だった。しかし、自称ぼんくら探偵・石岡クンの泥臭い捜査と推理、献身には素直に感動できる。これは、自信を喪失した中年男性の再生物語なのである。

巻末の二階堂黎人氏による解説もなかなかにインパクトのあるもので、一読の価値がある。15年ほども前のものであるから・・・時代性なのか・・・。

龍臥亭事件〈上〉 (光文社文庫)

龍臥亭事件〈上〉 (光文社文庫)

 
龍臥亭事件〈下〉 (光文社文庫)

龍臥亭事件〈下〉 (光文社文庫)

 

 

蛇足ではあるが、本作品は電子化がされておらず、久方ぶりに紙の本を読むことになりとても難儀した。まず、光源を確保しなければ始まらず、読む姿勢が限られ、わからない言葉は辞書を引っ張ってきて調べなければならない、など。己で書いていても恥ずかしい限りだが、電子書籍に慣れたせいで、こんなことも面倒になってしまった・・・。恐ろしい・・・。